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2011年3月 5日 (土)

一旦壊れた感情のダムは二度と戻らない(「決壊」 平野啓一郎)

読みたくてしょうがなかった本を要約読めました。100円で見つけたときはお店でも「おー!」と声をあげてしまいました。その本は芥川賞作家平野啓一郎さんの「決壊」と言います。数年前のこのミスの13位に入賞してたのをみてから、読みたくて読みたくて仕方なかった一冊でした。物語は何処のでもある男兄弟の話から始まります。兄は子供の頃から勉強も出来、女性にもモテる存在だが、何処か冷めて独身生活を送っています。一方弟はそんな兄にずーっとコンプレックスを感じながら、妻と子供と生活する一般的なサラリーマンです。ある日法事で久しぶりに実家に集まります。よくある家族の様子なんですが、実はここから心の闇はドンドン広がっていきます。弟は自分の悩みをネットに書き込んでいます。それを偶然見つけたその妻は、その事を義兄に伝えます。兄は弟と話し合う事を約束し、その通り後日京都で弟と会います。問題はその後です。弟は兄と別れた後に、何者かに殺害されバラバラの死体で発見されます。警察や妻は兄を犯人として扱い、マスコミも連日疑惑報道続けます。勿論犯人は別に居ます。一方虐めで引きこもりになり、ネットで架空の話を書き続ける少年が居ます。ある日彼に悪魔のささやきのようなメールが届きます。その男と会った少年は、殺人という渦に巻き込まれていきます。物語は犯人探しでても、殺害の理由を語るのでもありません。人間の心の闇を、ネット社会・虐め・被害者報道などから描いてあります。かなり重厚な内容です。ミステリーか?と聞かれればNOと答えます。そして芥川出身作家さんだけあって、所々に物語とはそれ程関係ない話が延々と語られるシーンもあります。そこが好き嫌いの分かれる点ではあると思います。結果主人公の兄は潔白になり、徐々にですが平穏な生活が戻ってくるような雰囲気なんですが、一度決壊してしまった心のダムは二度と戻らないんです。主人公はある決意をします。その決意とは・・・。上下巻ビッシリの大長編でした。読み終わったら不思議な徒労感に襲われます。でも決して嫌な徒労感ではないです。何か普段考えない事をシッカリ考えた気分です。万人向けではないですし、ミステリー好きにも薦めにくい作品ですが、吉田修一の「悪人」と同じような扱いの本だと思います。ただこちらの方が純文学寄りかな?

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