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2010年12月10日 (金)

ほとんどドキュメンタリー(「煉獄の使徒」 馳星周)

馳星周の渾身の大作「煉獄の使徒」を読みました。発売直ぐからオウム事件を下地にした作品と聞いていて読みたくて仕方なかった作品。その想いが通じたか、意外に早く100円でGETできました。煉獄とは(れんごく)と読みます。意味は(カトリックの教理で、小罪を犯した死者の霊魂が天国に入る前に火によって罪の浄化をうけるとされる場所、およびその状態を言う)だそうです。上下巻に文字ビッシリの大長編です。冒頭から直ぐにオウム事件そのもの話だと分かります。今までに似たようなテーマで作品を書いた人は多かったですが、ここまで真実に沿った物語は初めてではないでしょうか?個人や企業などの名前こそ違いますが、完全にオウムの事件そのものです。坂本弁護士事件・都知事落選・VXガスやサリンの製造・ロシアからの武器輸入など、実際のオウムの話が再び事細かに描かれています。唯一事実ではなく仮想の話が、オウムー警察ー政治家という繋がりの話。しかしこの話でさえ、実際の話ではないだろうか?と思えるリアルさです。宗教をテーマにした作品で、過去の名作は「カリスマ」新堂冬樹 「仮想儀礼」篠田節子 が上がりますが、この「煉獄の使徒」も加えてはいいのではないかと思います。ただし物語としては先に挙げた二作品には劣ります。その分ドキュメンタリーとして読めば数段上に感じます。なので終わり方は「え!!!!」と言うくらい、唐突で何も解決してないんです。その点がかなり不満は残りますが、この大作を書き上げた筆力には脱帽です。本当に狂っていたのは麻原含め一部のおかしな信者だけ。後はそれに引きづられ、精神が破壊され従っていっただけ。この構図が本当によく分かります。人間とは如何に脆いものか。考えさせられる読了感でした。宗教小説に興味のない人には苦痛な一冊です。

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