« 今後に期待!(「臨床真理」 柚月裕子) | トップページ | もっとB級色であって欲しい(「サバイバル・オブ・ザ・デッド」 ジョージ・A・ロメロ) »

2010年10月 8日 (金)

本当は忘れたい(「飛行少女」 伊島りすと)

第8回ホラー小説大賞を「ジュリエット」で受賞した伊島りすとさんの上下巻の大作「飛行少女」を読みました。「ジュリエット」を読んだ時、これはホラーなのか?と疑問に思ったんですが、確かに審査員の評価にあるように筆力は相当なものという感想には同感でした。そしてそのイメージを持ったままこの大長編を読んでみました。今回も不思議な話ではあるんですが、ホラー小説かどうか?と聞かれると疑問符がつきます。世間での評価はファンタジーホラーだそうです。物語は16歳になるとパニックになり、突然死んでしまうと言う病気に気づくことから始まります。何人かの患者に共通点があるのに気づいた主人公は警察の同級生と謎を解明していきます。その先に原爆というキーワードが浮かびあがって来ます(広島・長崎とは別にもうひとつ失敗で日本のある海辺の街に原爆が落ちた事になっています)。その周辺を探る事で謎の真相に行き着きます。果たして病気の連鎖は収まるのか?といった感じの内容です。前半はメチャメチャ面白いです。しかし謎の解明あたりから雲行きが怪しくなります。確かにホラー小説という枠組みの謎になってますが、無理やりホラーぽくしなくても良かったのではないでしょうか?デビュー作と同じく筆力はあるんですけどね・・・、という印象でした。原爆に関する印象深い言葉があったので書いておきます。「マスコミや偉い学者は、(忘れないために)などと毎月八月が来ると言い出しますが、そんなのは行事用の演説ですよ。被爆者が、もしできるなしたいことは、あの時の事をすっかり忘れてしまう事です」このセリフには絶句です・・・。確かに忘れてはいけない悲劇だと思うから、二度と過ちを繰り返さない為にも祭典をやるのは大切な事です。しかし当人達にとっては総て忘れてしまいたい事実。複雑な心境ですね。本当は忘れたいんですね・・。

|

« 今後に期待!(「臨床真理」 柚月裕子) | トップページ | もっとB級色であって欲しい(「サバイバル・オブ・ザ・デッド」 ジョージ・A・ロメロ) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 本当は忘れたい(「飛行少女」 伊島りすと):

« 今後に期待!(「臨床真理」 柚月裕子) | トップページ | もっとB級色であって欲しい(「サバイバル・オブ・ザ・デッド」 ジョージ・A・ロメロ) »