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2010年9月16日 (木)

ヒトに近いものは完全なものであり、完全なものは悪を含まねばならないという誤り(「アイの物語」 山本弘)

人とロボットの近未来を描いた「アイの物語」を読みました。作者は山本弘さんです。鉄腕アトムが手塚治さんに書かれた時代から、何時か人間と人型ロボットは共存する時代が来ると信じてやまない人類です(ちょっと大げさか?)。確かにかなり高性能な人型ロボットは現に存在するし、昔に比べるとリアルで動作も滑らかです。しかしある程度、自分で指向するまではもう少しかかる気がします。この本の物語は、ロボットが人間を凌駕している世界の話です。主人公の一人の人間とアイというロボットの話です。一話完結の連作短編集ですが、勿論話は総て繋がっています。語られるのはヒトとロボットの歴史。果たしてその話の先にあるのは?といった感じです。流石山本さん!かなり面白かったです。どっちが先か分かりませんが、瀬名秀明さんの「ハル」に似た印象を感じました。ロボットから見た人間という設定で作者は真実をしています。非常に面白い言葉があるので書いておきます。「すべてのヒトは認知症なのです(中略)ヒトは正しく思考することが出来ません。自分が何をしているのか、何をすべきなのかを、直ぐに見失います。事実に反することを事実と思い込みます。他人から間違いを指摘されると攻撃的になります。しばしは被害妄想にも陥ります。これらはすべて認知症の症状です」正にその通りです。またこうも言ってます。「私達にとって、差異は差異でなくそれ以上のものではない。だが、ヒトにとってはそうではない(中略)私達にとって問題にならないような繊細な相違で憎み合う(中略)私たちはヒトとはまったく同じ存在には決してなれない(中略)それは断じて欠陥ではない。ヒトよりも理論的かつ倫理的に優れているからである」人種差別や所得による差別などを繰り返すおろかな人間への痛烈な批判。ロボットが人間として完全に近くなろうとすると、誤りや悪や非理論的にならなければならない。それは良い事なのか?違うはずです。こう考えると人間とは何と不完全で愚かな存在なんでしょう。ロボットという対象を置く事で、それがはっきり浮かび上がってきます。非常に考えさせられる作品でした。

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