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2010年7月 8日 (木)

富士は日本一の山(「富士山」 田口ランディ)

大好きな作家さん田口ランディさんの「富士山」を読みました。タイトル通り富士山をテーマにした短編集です。何かと生き辛い現代の人達を浮きぼりにし、富士山をきっかけに再生していくお話です。物語も良いのですが、それ以上に文章表現が素晴らしい!幾つか紹介します人間同士の生っぽい気配に部屋が蠢いてる。男と女がいるだけで部屋の磁場が変わってしまう。僕の持ち物たちがざわざわしている」。人付き合いを極力避けて生きる青年が女性を部屋に初めて入れた時の表現。また可笑しな姉をこう表現します。「姉はどこか変だ。どう変だと説明できない。けど、きっと分子レベルで変なので、電子レンジでチンされちゃったみたいな感じ。人間味が抜けている。レトルトっぽいんだ」。そして生きている事をこう表現する。「ものすごく沢山の殺意や悪意が世界中には満ちている。だから無事に生きていられるなんて奇跡に近いんだ」と。確かにその通りかもしれません。そして死んでいく人の反面産まれ来る赤ん坊に対してこう表現する。「私は赤ちゃんを抱いているとき抱いているのに抱かれているように感じる」と。可愛さだけでなく、生物レベルで日々生きることだけが精一杯な赤ん坊から、生の素晴らしさと癒しを感じ取る。本を読み終わる頃には(生)の実感が沸きあがって来ます。そして後書きでランデイさんはこう言い切る。「生きろ!」と。総てはここに向かう為に書かれた小説。そしてその象徴として「富士山」があるが故にそこにある。意味深い事です。やはりランディさん好きだなー。感性がバッチリ合います。今回も素晴らしい読了感でした。

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