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2009年12月12日 (土)

価値観の違いと言うやつですか?(「私立探偵 麻生龍太郎」 柴田よしき)

昨年の私の読書のベスト1に選んだ「聖なる黒夜」という小説があります。柴田よしきさんという女性作家の本です。発売は数年前ですが読んだのが昨年だったので、私にとっては昨年のベスト候補に入り目出度く1位となりました(余談ですが今年のこのミスの1位は東野さんの「新参者」でした)。あらゆる本好きやラジオでもこの本の素晴らしさを啓蒙してきたんですが、知らないうちに続編(?)が出てました。その名を「私立探偵 麻生龍太郎」と言います。タイトルから分かるように、前作「聖なる黒夜」で警察を辞めた麻生龍太郎は私立探偵になって帰ってきました。その辺りは想像内です。警察時代に培った勘と経験を活かし問題を解決していきます。連作短編なんですが、事件の合間に練との事も書き込まれています。練とは麻生が昔誤認逮捕した事でヤクザ者になり、数年後に再会。その事実を知らされ麻生は警察を辞めます。その上恋愛感情さえもお互いにあると言う不思議な関係です。今回のシリーズでは既に肉体関係まである存在となって書かれていますが、どうしても譲れない事があり一定の距離感が埋まりません。刑事を辞めたといえ正義感の強い麻生は練がヤクザ家業と言うのが許せません。ましてその道に行ったのは自分の過去の誤認逮捕とくれば尚更です。事あるたびに辞める様説得しますが、結果ラストはそれぞれ別の道を歩むことを選択します。まー仕方ない結末ですが、「聖なる黒夜」に比べると浅い・・・。期待度が高かったせいもありますが、この話を書く必要があったのかどうか疑問です。麻生が活躍する探偵モノとしてだけなら評価できますが、練との話を書き切るには浅すぎます。残念。いつかジックリこの話は書いてもらいたいです。最後に印象に残った言葉を書いておきます。「若い頃に心に受けた傷がいつまでも痛むのは、言葉や行いに対しても無防備で、疑う事を知らないからでしょう。言葉とか相手の態度をそのまま受け止めそのまま反応してしまう。我々のように鈍感になってしまうと、相手の言葉をまともに聞いていないし、相手のことをまともに見てもいない。だから多少の事では傷つかなくなるんじゃないかな?」大人になると言う事は物事から逃げる癖が付く。面倒なものは聞かないし見ない。それで自己防衛することで何とか生きて行く。悲しいけどそれが現実です。納得のひと言でした。

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