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2009年12月 5日 (土)

強くて賢いはずるいの意味(「つきのふね」 森絵都)

今や一般文学でも大活躍する森絵都さんの「つきのふね」を読みました。直木賞受賞作「風に舞い上がるビニールシート」の出来栄えが物凄くよかったので、個人的には今何でも読んでみたいモードに入っている作家さんです。古本屋で見っけたのが1998年のこの作品でした。元々彼女は児童文学分野の人でした。一般文学と児童文学のターニングポイントになったのが「永遠の出口」と言われてますが、その前に書かれたこの作品の方がインパクト強い感じがしました。物語としての完成度はまだまだ稚拙ですが、何か言い知れぬパワーを感じさせる作品でした。(このごろあたしは人間ってものにくたびれてしまった。人間をやってるのにも人間づきあいにも疲れてしまって、なんだかしみじみと、植物がうらやましい)主人公の中学生の少女にこんなセリフをはかせる事からスタートする物語は、様々な事で揺れ動く青春時代の少女の葛藤描いています。細かい内容は書きませんが、大人になると気にしなかったり、気づいても気づかないふりをして過していしまう事にひとつひとつちゃんと向き合う少女の成長物語です。少女は(強くて賢いはずるいの意味)という言葉も吐きます。強くて賢いとは大人になる事と同義語として捉える事が出来ます。つまり大人はずるいんです。多感な少女時代はそんな大人が嫌でしょうがないんでしょうが、何時しか自分もその嫌な大人になっていく。その境目で揺れ動く気持ちを上手く物語りに仕立ててあります。少女の成長をこう言葉で書いてます。(いつまでも植物で居る事は、流れる時間や周りの人達がそれをゆるさない)と。人は色々な物に追い立てられて大人という別の生き物になっていく。自分がそれを拒んでも回りが許さない。この物語を読むと大人になる事が決して素晴らしい事ではないと実感させられます。一応ヤングアダルトという分野に入る作品ですが、大人が読んだほうが考えさせられる一冊だと思います。やはり森さんは素晴らしいです。

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