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2009年12月11日 (金)

持ち味よりこじんまりしたが佳作(「駐在刑事」 笹本稜平 )

「天空の回路」や「太平洋の薔薇」などの壮大で骨太な冒険小説を世に送り出してきた笹本稜平氏の「駐在刑事」を読みました。現在の日本の物書きの中で数少ないスケールの大きな物語を書ける作家さんなので何時もそれなりに気にしてます。しかし冒険小説という分野が人気が無いのか、今ひとつ注目度が薄いし売り上げもソコソコ。筆力のある作家さんだけに残念で仕方ありません。それならと作者が思ったのか編集者が言い出したのか分かりませんが、ここ最近の作品は流行の警察小説を多発しています。その走りの一冊が今日紹介する「駐在刑事」です。タイトル通り、元警視庁の有能な刑事だった主人公は、ある事件のミスで今は小さな山間の駐在となっています。事件らしい事件の起こる場所ではないので暇も多く、ロケーションと相まって山登りをするようになります。その知識と人脈がその後に起こってくる事件の手助けをするという展開です。連作短編集なので一話完結で読みやすいし、刑事時代のしがらみが所々顔を出してくるのも小技が効いてます。まースケール感は世界から山間の小さな村とかなり落ちますが、これはこれで読ませてくれます。今後は両系統を二つの軸として書き進んでもらいたいですね。最後に印象に残った言葉を書いておきます。「刑事捜査に奇策はない。事件がどれほど奇怪であっても、地道な事実の積み重ねの向こうにしか犯人の姿は浮かばない」事件の大きさや、自分の立ち位置の変化で捜査方法は変わらない。そんなたたき上げの刑事は今や小説の中にしか存在しないのかもしれませんがね。

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