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2009年11月21日 (土)

ひとつのジャンルを確立しつつある作家(「わくらば日記」 朱川湊人)

デビューから注目していて、私の想像以上の活躍をしている作家さんに朱川湊人さんが居ます。デビュー数作目「花まんま」で直木賞まで受賞をしてしまった時は、正直少し早すぎるのでは?と思った程です。受賞作品の内容も悪くないし、その他の作品もコンスタントに良質な出来栄えをキープしていますから、当然と言えば当然の受賞なんですが、私の心の中にはもっと凄い作品を書ける人という印象があったので、完全なる納得はしていなかった状態です。直木賞受賞後も精力的に短編集を書いてますが、どの作品も良書な印象。朱川さんにしか書けない、郷愁を纏った不思議な物語は、怖さではなく何故か懐かしく胸がジーンとしてしまいます。今回読んだ「わくらば日記」も読了後胸が熱くなります。決して号泣するような話ではないですが、何か涙腺の端の方を柔らかく刺激される感じです。私の知るところでは作者初の連作短編集です。活発な妹と病気がちなんですが千里眼の力を持つ姉が主人公。何時もの如く時代は戦争後の昭和時代。TVや電動ミシンの登場や、その時代の流行歌が所々に登場します。この姉妹が様々な事件に遭遇し、姉の千里眼の力で謎を解決していきます。しかし謎解きに物語の中心がおかれているわけではなく、その背後にある人間模様が今回もテーマです。前にも書いたんですが何時かちゃんとした長編を読みたい作家さんなので、この本はその序章にあたる感じがして楽しめました。既に続編もあり、朱川ワールドを確立した作品な気もします。今後も大活躍しそうです。最後に印象的な言葉があったので書いておきます。「人生というものは、時に底が浅く他愛のないものに思えることもあります。けれど、それを面白くもつまらなくもするのは、人間の心ひとつなのでした」戦後の日本を立て直した人達の気持ちは正しくこんな風だったんでしょう。後ろ向きに生きたって何も始まらない、だったら面白く前を向いて生きて行こうと。今の時代にも当てはまる事ですよね。郷愁と共に元気を貰える一冊でした。

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