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2009年9月12日 (土)

魂のランクが上がった小説家(「ソウルズ」 田口ランディ )

「コンセント」「アンテナ」「モザイク」など奇天烈な話で世の中に登場した事で、ぶっ飛んだ作家と認知されている田口ランディさんですが、盗作問題や誹謗中傷の嵐を超え、何だか凄い存在になって来た気がします。以前彼女の「オカルト」というエッセイを読んだんですが、その中の一文に(私には感じる力がある)というセリフがありました。感じると力とは決して霊的なことだけでなく、雨の気配や人が尋ねてくる気配など様々な意味でです。彼女のはその感じる力が人より強いんです。つまり人の気持ち(強さや弱さ、愛や憎悪など)を受け取る力が強いんだと思います。そのコントロールが上手く出来てない状態だと常に(死)などのマイナスの気配が付きまとう。彼女がデビューした当初はこの気配に支配されていた気がします。実の兄の餓死という事実がそうさせて居たんだと思います。しかし今回読んだ短編集「ソウルズ」は今までと少し気配が違う。勿論(死)や(霊)的なものが今までの作品と同じ様に登場しますが、愛に溢れているんです。何か魂のランクが一段上がった感じです。一話ずつ読み終わるとジンワリ優しい気持ちになるんです。後書きで彼女はこう言います。(みんな一人では生きていけないから、誰かと一緒にいたい(中略)それなのに、やっぱり一人。大好きな人の苦しみを代わってあげられない。痛みを分けてはもらえない。できるのはただ、相手の力を信じること。側にいますと呟くこと。そして、微笑むこと、辛い言葉に耳を傾けて黙って聞くこと。許すこと、放すこと。おせっかいをやくことは、あんがいと簡単。難しいのはなにもしないこと。なにもしないで、ただそばにいること。そばにすらいられないときは、祈ること。以前の彼女なら徹底的に相手に関係し、自分も相手の思考に絡めとられて雁字搦めになっていた気がします(作品の印象ですが)。しかし彼女はその呪縛から解放され少し方の力が抜けたんでしょう。それが作品に表れています。タイトルになっている「ソウルズ」はこの小説には本とふさわしい的確なタイトルだと思います。最後に彼女の〆の言葉を書いときます。(魂は、今日出会い別れても、何度でもまた出会う事が出来る。変わることに身を委ねれば、無限の出会いの扉が開く)新生田口ランディ誕生です。

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