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2009年9月 6日 (日)

メディアとは?ドキュメンタリーどは?人生とは?(「スプーン 超能力者の日常と憂欝」 森達也 )

オウム真理教に密着した「A」「A2」で一躍有名になった森達也氏の「スプーン 超能力者の日常と憂欝」という本を読みました。2001年に出た本ですが今になってその存在を知り読んだ次第です。子供の頃から胡散臭いネタに目の無い私なので、この手の本や番組は欠かさずチェックしてしまいます。内容ですが森氏がフジTVの深夜のドキュメンタリー番組撮影の為に三人の超能力者に七年間取材をした記録であります。三人の超能力者とは スプーン曲げの清田益章 UFOコンダクターの秋山眞人 ダウジングの堤祐司 の、その筋では超有名な三人です。この三人に森氏は否定でも肯定でもない立場で接し続けます。途中目の前で余りにも間単に起こる超常現象に肯定に傾き、また過去のインチキ騒動の取材では否定する気分にもなります。まーこれが一般的な人々の姿ではないでしょうか?しかしこの本は「信じるか?信じないか?」を問う本ではなく、あくまでも超能力者と呼ばれる人達の日常と憂欝を浮き彫りにしています。果てはメディアやドキュメンタリーのあり方、そして人の生き方にたどり着いています。印象的な言葉を書くと「要するにマスメディアが求めるベクトルを極論すれば、(脅威の的中率)という全面的な肯定か、さもなければ(トリック発見!)という全否定のどちらかなのだ(中略)言い換えれば、この両端のあいだのグレーソーンにはメディアは価値を見出せない(中略)この表層的な二律背反は、メディアが獲得してきた揺ぎ無いスタンスなのだから」とメディアのリアルを表面化し、自らの生業とするドキュメンタリーに対して「ドキュメンタリーを撮ると言う行為は人の営みと変わらない。互いに傷つけたり傷つけられたりという過程が、少しずつ映像として累積し、やがてひとつの作品に昇格する。その意味で表現行為は人を傷つける事から逃げられない。傷つけるポテンシャルのない表現などありえない。ただし後ろめたさは常にある。他者を傷つける事が宿命であるからこそ、他者の痛みに対しては誰よりも鋭敏でなければならない」と身を正し、そして「僕は彼ら全体を見る。客観的な証明など何の価値も無い。僕が彼らを(どう思うか)が重要なのだ(中略)その上で断言する。トリックや錯覚や虚偽や思考停止が横溢する世の中で、僕らが今、営みを続けていることはきっと疑いのないような事実だ。しかし少なくともこの三人が、社会への希望を捨てず誇りを持って生きていることだけは、この作品において僕は胸を張って断言できる。これが僕の結論だ(中略)自分を信じ、他者を信じ、日々を送る彼らを僕も信じる。彼らの人格を信じる。ただそれだけのことなのだ」という結論を出す。森氏自らの言葉を借りれば超能力という事柄に対して、ドキュメンタリーにあるまじき肯定も否定もしないグレーな結論を出しながらも、七年間の密着取材で感じ取った彼らの人となりを人間として信じる結論を出す。森氏らしい結論です。オウムの信者に対しても同じ様な結論を出していた気がします。長々と書きましたが、客観的にみて聴能能力者と呼ばれる三人が、本当に能力があったとしたら、それを否定され続ける事は本当に苦痛だろうし、逆に嘘を付き続けているとしたら、これも人間として相当辛い日々になるはずです。どちらにしても彼らは憂欝な日々を送っている筈です。それに耐えうる強靭な精神力があるだけである意味(超)能力者なんだと実感しました。超能力に興味の無い方でも、物凄く何かを感じ取れる良い本だと思います。

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受信: 2009年9月 8日 (火) 21時57分

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