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2009年7月25日 (土)

忘れていかないと燃え尽きちゃうよ(「悼む人」 天童荒太 )

人間と言うものは不思議な生き物で、生に執着すれば常に死がまとわり付き、死を受け入れる覚悟が出来た瞬間から生の意義が理解できたりする。このパラドックスは何だろう?天童荒太さんの直木賞受賞作「悼む人」を昨夜読み終えて、今朝までズーッと様々な事が頭をめぐり続けています。天童作品といえば「家族ゲーム」「永遠の仔」に代表されるように、テーマが家庭崩壊や幼児虐待などのリアルに重いテーマが得意のイメージですが、今回もその路線を外す事無く非常に考えさせられる物語でした。話の軸となるのは、全国各地の人が死んだ場所(事件だったり事故だったり自然死だったり)でその人の死を悼む旅を続ける青年です。勿論その人とは縁も縁も無く、自分自身でも何故こんな旅を続けているのか理解出来ていません。しかししなければいけないと言う理由の無い責任感と、嘆くのではなく悼むという事だけをルールに旅を続けています。その一方青年の母は癌で余命わずかの状況。旅をし続ける青年はその事実さえ知りません。また一方ゴシップ記事ばかり書く記者は、ひょんな事から青年の存在を知り、初めは偽善者と感じ青年の行動貶める記事を書こうと情報を集めだします。また一方実の夫を訳あって殺害し、刑期を終えて出所してきた女性は、自分の殺害現場で悼む青年の姿に偶然出会い、自身の死に場所を求めて青年と旅を共にするようになります。このように主人公の青年を軸にして三人の人生が描かれていきます。物凄く読みたかった事もあるし、流石の筆力なので殆ど二日で一気読みしてしまいました。途中涙が自然に溢れてきたり、ふと自分の人生と重ね合わせて読書する手を止めて考え込んだりしてしまいました。最初にも書きましたが、この本にはあらゆる死が描かれています。なのに不思議と生きる意義が浮かび上がってきます。これだけ考えさせられた本を読むのは本と久しぶりな気がします。流石天童氏といった感じでした。しかし一冊の小説としての評価となると微妙な気もします。傑作「永遠の仔」のような物語としてのワクワク感やドラマ性は全くないし、結果主人公の青年の悼む意味の答えが描かれていないモヤモヤ感も残ります。読み手が考えろと言う事なのか?それとも永遠に答えなど存在しないのか?はたまた作者自身が未だ答えを見つけていないのか?どれも正解である気もします。ゆえに小説としての完成形ではない気がします。かといってツマラナイ本か?と聞かれれば全く持ってそんな事は無く、物凄く大きなしこりを読了後も私の胸に残した稀有な本です。非常に評価の難しい一冊です。周りの読書好きに絶対読めと薦めて、感想を語り合いたい感じは物凄くします。また自分が後数十年経って今よりも死をより意識した時に再読したい気もします。上手く書評が書けませんでしたが良い本である事は間違いないですが、面白い本ではないです。最後に印象に残った言葉を書いておきます。「どの死は覚えておくべきで、どの死は忘れても仕方ないのだろう。誰かの死を忘れても仕方ないものにしてしまうなら、結局はあらゆる人の死が忘れ去られても仕方の無いものになってしまう」人間は忘れる生き物である。死もその一つで例外ではない。そうでなければ死に押しつぶされてしまうからだとも感じました。

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