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2009年6月13日 (土)

残念ながらSFを書く才能は感じられない(「パラドックス13」 東野圭吾)

未だに「ガリレオ」旋風の勢いの続いている大人気作家東野圭吾さんのSF作品「パラドックス13」を読みました。ホカホカの最新作なんですがお客さんにお借りして早速読む事が出来ました。天邪鬼的な性格もあるので、世間で売れているものに対して辛口評価する私ですので東野さんに対しても何時も少々辛口評価です。さて今回私の知る限り初のガチガチのSF小説です。13時13分からの13秒間に何かが起こると(雑だな・・・)発見する科学者が冒頭登場します。Pー13現象という名前がつけられ対策が国の上層部だけで練られますが、如何せん経験の無い事態に、とりあえずその13秒間はおとなしくしている事と関係各位に伝えられます(子供か!)。しかし下々にそんな話は伝わる分けなく問題の13秒間を迎えます。そして運悪くその13秒間に13人の人間が別世界に掘り込まれます。読んでいても直ぐネタバレする事なので書きますが、この13人は運命の13秒間に事件や事故などで死んだ人間です。つまり現実の世界では死んでしまっているはずの人間達です。その事に気づくのは中盤なんですが、兎に角その13人で荒廃した別世界でのサバイバル生活が淡々と描かれていきます。一人死に二人死に、内部分裂あり。果たして残された人々は元に戻ることが出来るのでしょうか?そして戻ったとしても生きているのだろうか?というのがこの物語の大まかなあらすじです。先ず良いところを言いますと相変わらず文章は読みやすいのでサクッと3時間ほどで読了できます。SFとはいっても難解な説明や事実表記がないので、SFを読むさいの気づかれも全くありません。その点は幅広い読者層に支持される東野さんならではだと思います。でも褒めれるのはそこまで。果たしてSF小説を書く意味があったのか?そしてこれだけ幅広い知識が求められる時代のSF小説としては稚拙すぎます。20年以上前なら大歓迎されたと思いますが、説得力が無さ過ぎます。ファンの方は激怒するかもしれませんけど。また作者はSF的な舞台を設定しながら人間関係を描きたかったんだよ!と言う人もいると思いますが、それにしてもその点も薄い。正直自分には天才漫画家梅図かずお氏の「漂流教室」&さいとうたかお「サバイバル」を足した感じの印象でしかありませんでした(25年位前に読んだ漫画ですもんね)。残念ながらSFを書く才能は感じられませんでした。毎回言いますがそれでも馬鹿売れするんでしょう。最後に文中に今の老人社会に対してズバリ言った良い文章がありましたので書いておきます。「当たり前のことだが、自然の土地にバリアフリーなんてことはない。どんな所でも自分足で乗り越えていかなきゃいかない。ところが社会文明というものにどっぷりつかるようになった(中略)真の老人福祉に必要なのは手を貸してくれる人なのだ」過酷な世界では人の手のありがたさに本気で気づきます。現代社会でもそれに気づけば皆が人に対して優しくなれるんですけどね。過酷な現状に置かれて人は初めて大切な事に気づきます。この点は昔から変わりません。

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