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2009年5月 3日 (日)

本当の悲しみは思い出の日々にある(「失われた町」 三崎亜紀 )

人間の人生の中で確実に分かっていることが一つだけあります。それは必ず何時か死ぬという事です。寿命をまっとうする人もいれば、不慮の事故や病気で短い人生となることもあります。その線引きは誰がどう引くのでしょうか?志半ばで死ぬことは本人にとっては物凄く無念な事でしょうが、悲しみの深さは本人よりも残された人々の方が強いものです。そんな残された人々の悲しみや再生の物語をSFタッチで描いた小説を読みました。三崎亜紀さんの長編二作目にあたる「失われた町」という一冊です。帯に本屋大賞9位受賞の文字があります(9位って何か微妙な順位ですが・・・)。物語は30年に一度町が自らの意思を持ち消滅をしてしまい、そこに住んでいた人々も丸ごと消えてしまうという設定です。何時もの事ですが三崎さんの本はデビュー作の「となり町戦争」からあり得ない設定で物語りは始まります(鼓笛隊の来襲・バスジャックも同様です)。そのあり得ない設定の下で、愛する人の突然の消滅と、その後残された人達の悲しみからの再生の物語です。消滅した町に関係のある人達の物語が連作短編で進んでいき、いつの間にか話がリンクしプロローグとエピローグの意味が分かるという技法がとられています。別段この技法が新しいとは思わないし、相変わらずのこの不思議な世界感には共感はもてるのですが、いたってシンプルな感動話をわざと難しくしてるのではないかと思わせる物語には少しゲンナリしてしまいました。短編ならこの設定も我慢できるんですが、長編となると途中でもういいよ!というお腹一杯感を感じてしまいます。芯にある物語は物凄くいい話なので、次回は設定を難しくせずに一度直球勝負の作品を読んでみたいものです。本屋大賞9位という微妙な順位が佳作であはるけど傑作ではない事をあらわしている気がします。贅肉総てそぎ落とした作品こそ万人に感動を与えられる気がします。それでも三崎節は今回も健在です。いい言葉があったので最後に書いときます。「失うことのつらさは、単に失われるという事実のみならず、失われてもなお滞りなく動いていく「日常」と対峙しなければならないことにある」非常に的を得た言葉であり、この作品の総てを表している言葉であると思います。次作の長編に大いに期待しています!

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