« 君にささげる、たったひとつの作り話(「The Fall~落下の王国」 ターセム監督 ) | トップページ | 本当の悲しみは思い出の日々にある(「失われた町」 三崎亜紀 ) »

2009年5月 2日 (土)

生きることは、怖いものや汚いものに遭遇すること(「名もなき毒」 宮部みゆき )

2006年の話題作宮部みゆき氏の「名もなき毒」をようやく読みました。ここ最近時代物やファンタジー物ばかりで、現代ミステリーをほとんど書いていなかった印象があるので物凄く期待して読み出しました。読み出してすぐに気づくのはこれが「誰か」という本の続編だということです。幸い「誰か」を読んでいたので難なく読み進めることが出来ました。物語は世の中に溢れるあらゆる毒(環境汚染・シックハウス・青酸カリでの殺人事件)と、人間そのものが発する毒をうまく絡めてあります。青酸カリを使った殺人事件を軸に、少し頭がおかしいとしか思えない女性の逆恨みの話が中心に進んでいきます。流石様々な複線をきれいにまとめる技量は凄い6と感心させられますが、正直少し期待はずれでした。比べてはいけないのですが世間のあまりの高評価から「火車」や「模倣犯」レベルを期待していたのですが、結果は足元にも及びませんでした。ハードルが高くなっているので仕方ないですが、この程度の話なら宮部さんの力量を持ってすれば普通で、傑作という部類の範疇には入りません。良くも悪くも登場する人物総てが毒を持っています。自分の思い通りにならないと切れるアルバイト女性・権力をかざす義理の父・世間知らずの妻・下世話な話をする同僚達など、犯罪になる程度ではないですが人生にはあらゆる毒に溢れています。主人公を人畜無害の無味無臭の存在にしたことでそのことが際立ちます。この主人公はこんな生き方で幸せなんだろうか?いやこれを生きているというのだろうか?読み終わって物凄く違和感を感じました。メインとなる殺人事件よりこの何気ない毒を実は宮部氏は描きたかったんだろうと思います。最後に主人公が始めて自分らしい一歩を踏み出す予感を感じさせる選択を匂わせて終わります(探偵を職業にしょうという事)。自分をまったく出さなかった主人公の決意を感じさせると共に、続編の複線はバッチリです。先ほども言いましたが期待していただけに残念な読了感でした。タイトルの由来にもなった名文があるので書いときます。「かってジャングルの闇を跳梁する獣の牙の前に、ちっぽけな人間は無力だった(中略)しかしライオンという名前が与えられてから(中略)姿無き恐怖は形が出来た。形があるものなら、捕らえることも、滅することも出来る。私は内にある毒の名前が知りたい」人間の持つ毒も名前が与えられ存在がハッキリすれば簡単なのにという切なる願いが表れた名文でした。次作に期待です!

|

« 君にささげる、たったひとつの作り話(「The Fall~落下の王国」 ターセム監督 ) | トップページ | 本当の悲しみは思い出の日々にある(「失われた町」 三崎亜紀 ) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 生きることは、怖いものや汚いものに遭遇すること(「名もなき毒」 宮部みゆき ):

» アルバイト 夏休み [アルバイト 夏休み]
アルバイトで夏休みのことを考えている人はいますか? アルバイトで夏休みにやりたい人は是非どうぞ。 [続きを読む]

受信: 2009年5月 9日 (土) 14時54分

» アルバイト 海 [アルバイト 海]
アルバイトを海でやりたい人はいますか? アルバイトを海で探している人は是非見てください。 [続きを読む]

受信: 2009年5月 9日 (土) 22時11分

« 君にささげる、たったひとつの作り話(「The Fall~落下の王国」 ターセム監督 ) | トップページ | 本当の悲しみは思い出の日々にある(「失われた町」 三崎亜紀 ) »