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2009年3月14日 (土)

一瞬キラリと光る才能を感じさせる作家(「バスジャック」 三崎亜記 )

三崎亜記さんの短編集「バスジャック」を読みました。三崎作品は「となり町戦争」「鼓笛隊の襲来」以来の三作目です。三崎氏の持ち味は絶対にありえない設定を初めに用意しておき、読者を「おっ!」とさせておいて、物語が進むと意外にイイ話に変って行くという点です。今回も二階扉をつけるという設定(勿論階段ナシの)や表題作は「最近バスジャックが流行らしい」という一文から始まったりします。ジャンル分けするとしたらSFやファンタジーの部類に入ると思うのですが、そう決め付けて読んでると不意に泣かされたりします。本当不思議な作家さんです。七つの短編からなる今作ですが、6作品は現実ではありえない非日常世界の話なんですが、「送りの夏」という作品だけは現実に起こりそうな話でした。個人的にはこの話が物凄く良かったです。昔愛した人の最後を送る為、突然家庭を投げ出してその人の側につく事を決めた母親。その母親の真意を知りたくて夏休みの間その母親を訪ねて行く娘が主人公です。その尋ねた先は何組もの家族が同居する奇妙な集団で、それぞれが意識の無い状態の難病の家族を一人かかえた家族達です。母が昔愛した人も生きてはいるが自ら動く事も意志を表現する事もありません。そこで一夏を過す事で様々な経験をし成長していく主人公の娘の姿が描かれています。人の死や家族のあり方を問う話です。唯一不思議なひねりは無い作品ですが、恐ろしいほどの何か心に残るパワーを持った作品です。この一話読むだけでも価値あると思います。イイ言葉があったので最後に書いときます。(信じるというのは一方的な気持の押し付けだ。こうあってほしいていう身勝手なものだね。信頼するっていうのはそれとは違う。互いの存在や考えていること、やろうとしていることを認め合える関係のことなんだ)信じる事と信頼する事。一見同じ様に感じるこの言葉の違いをズバリ言ってます。三崎さんシリアス路線だけでも行けるから、この路線で長編お願い致します。

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