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2009年3月 7日 (土)

これはある意味小説家養成本だ!(「浄夜」 花村萬月 )

他に誰も真似出来ない世界観を持つ作家花村萬月さんの「浄夜」を読みました。萬月の傑作と言えば「ブルース」が一番初めに思いつきますが、あの当時の作品(「皆月」「二進法の犬」「笑う山崎」)はどれも傑作です。その後の作品は少し説教臭い部分が鼻につき、物語の部分が蔑ろにされている気がします。それでも大好きな作家さんなので見つけると必ず読んでしまいます。さて久方ぶりの萬月作品だったんですが、これはありの作品だと思います。のっていた当時の説教と物語がバランスよく書かれている作品と近い感じでした。主人公は過食嘔吐を繰り返す自称モデルの女性。自称モデルと言ってますが実家の八百屋のチラシのモデルになった事かあるという程度の妄想癖のある女。良い意味でも悪い意味でもその世間とは違う思想を小説にしています。そしてその奇妙なパワーを持つ小説を世に送り出そうとする敏腕編集者二人がメインの物語です。今作品は他に対する暴力描写は殆ど無く、ひたすら自分を過食嘔吐で虐める描写が壮絶に描かれます。そしてSMの様な自虐的なエロも事細かに描かれています。流石このあたりは萬月氏の独断場です。一体このぶっ飛んだ話は何処に着地するんだろうと心配になりますが、これがちゃんとするんです。いささかエンディングを急ぎすぎた感じは否めないですが、ちゃんと小説としてオチを迎えます。しかし読み終わっても何処までが現実で、何処までが虚構の小説の世界か境界線が曖昧なまま放り出されます。このあたりは萬月自身も文中で(結の罠から巧みに身をひるがえす事が出来る小説家はのびていくよ)と編集者の口を使って語らせています。正に起承転結の(結)などの呪縛など萬月氏にはありません。あくまでも夢ですが私自身も将来何か書けたらいいと無謀な夢を見る人間としては心にグッとくる言葉に溢れています。例えば(喋らなくていいのが小説家という商売だ)(喋ると薄まる。言葉を浪費してはいけない)という言葉です。普段から小説家は様々な思いや不満・欺瞞を溜め込むだけ溜め込んで紙の上に爆発させろ!と言う意味です。あーあ。普段から喋りすぎている自分を冷静に観察して、やっぱり小説家にはむいてないと一人落ち込みました。自分の落ち込みはさて置き、本と久方ぶりにバランスの良い萬月作品です。ファンは当然、小説家を夢見る人も必読ですよ!

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