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2009年2月14日 (土)

持ち味と求められる物の違い(「光」 三浦しをん)

昨年出あった作家さんの中で一番あたりが三浦しをんという女性作家です。彼女との出会いは一昨年前に読んだ柴田よしきさんの傑作「聖なる黒夜」の後書きでです。その表現力の凄さが物凄く気になり、彼女の作品を探して読み出してから大ファンとなりました。相当遅れての出会いだったんですが、直木賞も受賞しあれよあれよという間に有名作家になってしまいました。好きな作家さんが世間で認められるのは嬉しいんですが、売れると本来の持ち味を発揮出来なくなる傾向があるのが気になります。直木賞を受賞したのが「まほろ駅前多田便利軒」という軽快で分かりやすい作品だった為、その後の作品にも同タイプな感じが求められるのか、元々彼女の持っていたアングラな視点や、ハッとする文章表現は影を潜めている気がします。ここに一冊の本があります。三浦しおんのホカホカの最新作「光」という本です。未だ本屋の新作コーナーに平積にされている程の最新作です。何と古本屋にありましたので我慢できずに購入。ここ最近の爽やかな話と違い、ダークな話だという噂だったので読んでみたくて仕方なかったんです。物語は地図上は東京都になる小さな島から始まります。そこで暮らす中学生の男女と小学生一人が物語りの主要登場人物です。ある日地震による津波で自分達と後二人(一人は釣りをしにきた都会人)だけが助かります。その混乱した状況で少年は彼女を守る為殺人を犯します。その事件は永遠の秘密とされ闇に葬られます。第二部はその後のそれぞれの人生が描かれます。何十年もたってからあの事件がそれぞれの人生を狂わせ始めるという内容です。読んでいた途中で感じたんですが、これって東野圭吾氏の「百夜行」や「幻夜」とそっくりな話です。子供の頃の殺人事件を引き摺り影で生きている男と、それをステップに華々しく生きる女。この対比も全く同じだし、「幻夜」は阪神大震災の中での殺人という天災がらみというのも同じ。偶然と言うにはあまりにも似ています。その上物語の上手さや人物描写の深さは東野作品の足元にも及びません。かなり期待して読んだだけに残念で仕方ないです。正直三浦氏の良さはストーリーでは無い気がします。初期作品に溢れていたあの甘美な文章表現こそが彼女の絶対的な持ち味な筈です。変に直木賞受賞したのが悪い方向に向わせてしまったのかもしれません。稀有な作家さんだけにオンリーワンの路線を進む事を望みます。次作に期待します。

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