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2008年11月 2日 (日)

作家としてのレベルアップ(「女王国の城」有栖川有栖)

10年一昔と言いますが変化の早い現在において10年は二昔と言っても良い位です。そんな何事も早く流れる時代に15年と七ヵ月ぶりのシリーズ新作を発表した作家がいます。その名を有栖川有栖(ありすがわ・ありす)と言います。今回発売した「女王国の城」という本は、学生アリスシリーズの四作目です。作者のデビュー作にしてシリーズの一作目「月光ゲーム」、続編「孤島パズル」、そして氏の代表作となった名作「双頭の悪魔」から15年ぶりの新作です。前三部作が四年間で書かれたのに対して、15年は気の遠くなるような長さでした。やはり前作の「双頭の悪魔」の出来栄えがあまりにも良く、作者自身も書くのを躊躇ったのかもしれません。ファンにとっては本と街に待ったシリーズ最新作です。上下二段の500ページを超える大長編です。2008年の「このミステリーがすごい!」でも第3位にランクインしていたのでかなり興味がありましたが、新作なので5年後か?と諦めていたのですがSさんのお蔭でお借りできました。今回の舞台は人里はなれた山間の盆地にあるUFO飛来を信じるとある新興宗教の建物。入ることも出る事も出来ない状況下での殺人事件に巻き込まれます。出入り不可能とすれば犯人は必ず建物の中に居る人物。王道犯人探しがメインのテーマです。加えて殺人事件が起こったにも関わらず三日後までは警察には知らせないと言う、宗教団体側の言い分。三日と言う限定に何の謎が隠されているのかという謎がサブテーマ。二つの謎のヒントをあらゆる所に散りばめながら、優雅に時間は流れていきます。昨今のミステリーは意外性だったりスピード感が重視されますが、この本は本家王道ミステリーのドッシリ感があります。この点がファンには堪えられないんでしょうね。流石に傑作である前作を越える事はありませんが、ミステリーファンには大満足な出来栄えではないでしょうか?待った甲斐ありだと思います。ミステリーとしてのレベルアップというよりも、作者の作家としてのレベルアップを感じさせる内容となっています。安心感・安定感大の一冊です。

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受信: 2008年11月30日 (日) 00時19分

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