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2008年9月15日 (月)

真実を積み重ねて作り上げた嘘(「TENGU」柴田哲孝)

改めて言うまでも無く小説は基本的にはフィクションです。故に現実には起こりえない世界をこれでもか!と描く事が出来る。しかし部分・部分に散りばめられたピースは真実を取り入れたりする事もあります。その真実のピースの使い方が上手いほど、その小説は一気にリアルな嘘となって、読み手の真実と虚構の境界線を曖昧にし、世界に嵌り込ませます。そうなれば作者のしてやったりで、読者にとっては傑作に出会うという楽しみがあります。第9回大藪春彦賞を受賞した柴田哲孝(しばた・てつたか)さんの「TENGU」を読んで、久方ぶりに真実と虚構の曖昧な境界線を楽しめました。元々作者はノンフィクション作家だったので、小説の書き方やテイストがノンフィクションぽく、それが妙なリアル感を醸し出します。タイトルから分かるように天狗伝説が物語りのスタートです。5組しか住んでいない山奥の寒村でとても人間とは思えない殺し方の殺人事件が起こります。人間業とは思えない仕業や現場に残された体毛のDNA鑑定より、人間でも類人猿でもな異形の存在が浮き彫りになります。調べていくうちに新たになる米国の軍隊の存在や、その先にあるベトナム戦争や9.11のテロとの関連。一見全く関係ない様なパズルのピースを組み合わせていくと想像し得なかった一枚の絵が出来上がります。そこで初めて読者は作者の描きたかった完成図を知る事が出来ます。成る程!と唸る人も居れば、騙された!と悔しがる人もいると思います。私の気持は取り合えずよくぞこの複雑なピースを組み合わせたという賞賛と、これえだけ面白そうなピースを組み合わせた割には完成図がツマラナイという両方の気持です。ここまで読者を引っ張るだけ引っ張ってこのエンディングは物足りないというのが本心です。でもそこにたどり着くまでは本当の面白いんです。だから惜しい!それでも好きな作家さんの一人になった事も事実です。今後も作者の作品を読んでいきたいと思わせる人に出会いました。

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