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2008年8月30日 (土)

有終の美(「九月が永遠に続けば」沼田まほかる)

五十嵐貴久さんや道尾秀介さんなどの人気作家を排出したホラーサスペンス大賞は、惜しまれつつ第五回を持って終了しました。その最後の対象受賞作「九月が永遠に続けば」を読みました。何と作者である沼田まほかるさんは56歳で作家デビューだそうです。夢は何時までも持ちつづけるものですね。さて既に情報誌でこの本が素晴らしいと言う前情報得ていたのでワクワクしながら読み始めました。マンションのゴミ捨て場にゴミを捨てに行ったきり財布も何も持たずに突如息子が失踪します。主人公は離婚をして息子二人と暮らす母親。初めはその息子の失踪の謎を追う形で話が始まるのですが、徐々にその波紋は主人公の関わりのある人達に不幸をもたらし始めます。不倫相手が電車に轢かれ死に、元旦那の連れ娘子が家出し自殺。その不幸の根源を探す方向に自然と向かっていきます。結果総ての根っ子が一人の人間の存在自体に終着します(ネタバレになるので細かい説明は省きます)。しかし厄介なのがその存在自体には悪意も何も存在しない事です。周りが勝手にその存在の持つ怪しい魅力に取り込まれ狂っていくんです。本当にこの本が新人の書いた作品とは思えない上手さです。一見息子の失踪というベタネタだし、今流行りの大ドンデン返しも無いので、非常に地味な作品と感じるのですが、有り余る程の筆力がグイグイ世界に読者を引きずり込みます。気付いたら読了していました。ここまで一気読みさせられたのは久しぶりでした(但し賞のタイトルにあるホラー性はほとんどありません)。こんな才能のある人を見つけながら賞自体が廃止されるとは残念な事です。仕事である日本酒離れを日々嘆いていますが、活字離れも相当の危機レベルまで来ているのでしょうか?こんなにも楽しめる小説と出会えるのに嘆かわしい・・・。

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