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2008年6月16日 (月)

舌と心で味わう小説(「花の下にて春死なむ」北森鴻)

第52回日本推理協会賞短編賞を受賞した北森鴻さんの「花の下にて春死なむ」を読みました。普段なら絶対手を出さない系の本ですが、ミステリー好きに薦められて読んでみました。西行の句の一部分をタイトルにした小説といだけでも内容の渋さは予想できますが、その通りの渋いミステリーでした。良くも悪くも昔ながらの古臭い王道の文体に、最近のテンポの良い文体に慣れている人には、少しリズムにのれずに読みにくいかもしれません。その分じっくり読まないとイケナイので、じんわり味わい深いものが広がるのも事実です。一応ミステリーという形式をとっていますが、謎解きの部分よりも全体を通して流れるゆるやかな時間を楽しむ感じの小説だと思います。小説の大半の舞台になるのがビアーバーなんですが、そこのマスターが探偵役であり、また一話毎に美味しい料理も登場します。その料理の表現の仕方が絶妙で舌も満足させてくれます。今回印象に残った言葉は「珍しくないんです。肉体を持った幽霊なんてのは」という一句です。物語を読んでいないと意味が分からないと思いますが、存在していても何らかの理由で存在を消すように生きている人、でも言いいましょうか?人間は皆何らかの業や秘密を背負っていて、息を潜めて密かに生きてイカナケレバいけない存在の人も確実に存在するんですね。ミステリーというよりは味わい深い人間模様の小説を読んだ読了感でした。

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