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2008年4月 9日 (水)

歴史的現実は後追いでは架空(「タペストリーホワイト」大崎善生)

私の中では10割バッターの大崎善生さんの「タペストリーホワイト」を読みました。帯びに(Will you love me tomorrow)と大きく書いてあります。音楽好きならピンと来ると思います。そうです歴史的名盤キャロル・キングの「タペストリー」の中の名曲です。それに気付くと「タペストリーホワイト」というタイトルもおのずと納得がいきます。物語は学生運動真っ只中の70年代。好きな人を追って東京の大学に行った姉は、その人の影響で学生運動に関係し内ゲバで殺害されます。その姉の気持と死の謎を知りたくて、同じ様に東京の大学に進む妹。その妹が主人公となり四話の短編で綴られる連作集です。姉が生きていた時にコッソリ覗いた姉の部屋には、キャロルキングの「タペストリー」のLPとその歌詞に挟まれていた一通の手紙。そこには「明日もあなたは私を愛してくれますか?」という一文と男性の名前。唯一残されたその手がかりを元に姉の足跡を追います。そこで出会う恋人との生活。一瞬の幸せの後に訪れる姉と同じく内ゲバによって恋人が殺害される。大崎氏の本には何時も死の臭いが付きまといます。再びどん底に落ち込む主人公が癒され再生していくだろう予感を感じさせ物語りは終結します。大崎作品にしては意外にスンナリ終わります。ん~どうでしょう?判断が難しい作品な気がします。70年代に生きていたら確実にノンポリだった私の性格が共感しないのか、はたまた重厚な大崎ドキュメンタリー作品と比べるからなのか分かりませんが、個人的には今まで読んだ大崎作品の中では今一つでした。決して大崎さんは思想的な事は言ってないし、どちらかと言えば冷めた視点で描いています。その点はある意味私と同じなんですが、何故このタイミングで学生運動を下地にしなければいけなかったのかが疑問です。団塊の世代を狙ったのでしょうか?歴史的には70年代は確実に存在し学生運動も現実の起こっています。しかし過ぎ去った今その当時の話をされても、私的には大化の改新も明治維新も安田講堂事件も総て架空のお話にしか感じられません。内容的には今一つのめり込めませんでしたが、今回も綺麗な文体と表現力は流石だと実感させられました。次作に期待!!!

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