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2008年4月29日 (火)

人生色々、女も色々(「赤朽葉家の伝説」桜庭一樹)

「私の男」で直木賞を受賞で話題になっている桜庭一樹さんの「赤朽葉家の伝説」を読みました。山の上のお屋敷に住む旧家の女性の三代記です。第一章が赤朽葉家に嫁いできた千里眼の力を持つ万葉、第二章がその娘毛毬、三章がその娘の娘の瞳の視点で描かれています。それぞれが戦後の高度成長期、バブル期、そしてバブル崩壊後と激動の昭和史と時代背景が移り変っていく構成になってます。しかし時代背景を丁寧に織り込みながらも、物語の中心は常に山の上の屋敷の中での物語に終始するので、どこか現世とはかけ離れた印象を受けます。でもその点こそがこの物語の格式を上げている気がします。文章も上手く山の上のお屋敷の情景が読んでいると鮮明に頭の中に浮かび上がって来ます、特に赤朽葉家の衰退と共に荒れる庭や、取り壊される時代遅れの溶鋼炉の描写は秀逸で、寂れていく様がジンワリとした切なさを思い起こさせます。大傑作とまではいかないですが、何時か桜庭さんは凄い作品書く気がしてなりません。只ひとつ文句を言うとしたら、この本はミステリー扱いで紹介されている点です。「このミス」でも第2位にランクインしていたのですが、ミステリー色はかなり薄いです。逆に言えばミステリーの部分などどうでもイイ感じです。どちらかと言えば「嫌われ松子の生涯」の様な読了感でした。読み終わった後古き良き日本の情景に包まれ、殺伐とした平成の現在が日本が間違った方向に進んでしまった事を実感させられます。もう戻る事は不可能でしょう。そう思うと寂しい限りです。

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