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2008年4月22日 (火)

俺が語る彼女は(「私が語りはじめた彼女は」三浦しをん)

本日も三浦しをんさんについて書きます。私が存在を知らなかっただけで彼女は既に2006年に「まほろ駅前多田便利軒」という作品で直木賞を受賞していました。普段ミステリーの分野には事細かに情報収集していますが、その他の分野に関しては全く目を向けていないので認知が物凄く遅かったりします。まー本との出会いなんぞタイミングなのでそれで一向に構わないんですが、物凄く才能ある人で自分の感性に会う人だと出会いの遅さに後悔さえします。久方ぶりに私に後悔をさせた人が三浦しをんさんです。よく直木賞を取る作品の一作前が作者のベスト作品だという定説があるので、それにならって一作前を読んでみました。タイトルは「私が語りはじめた彼は」と言います。タイトルが表している通り、村川という大学教授の周りに居る人々が教授について語る形式が取られています。このスタイルは宮部みゆき氏が「火車」や「理由」でとったスタイルですね。教授の弟子・元妻・再婚相手の娘・息子・愛人達が、教授と関わった事で狂った人生の歯車をトツトツと語ります。教授自身に悪意はなく(それが問題なんですが)、研究者にありがちな純粋な真っ直ぐな気持というやりたい邦題で周りに騒動を起こします。しかし話の中心に教授本人は不在です。あくまでも原因としての存在であるだけで、物語には殆ど出てきません。まだ二作目なので偉そうな事言えませんが、兎に角文章表現が凄い。どうやったらこんな言い回しや比喩が出てくるんだろう?と思うくらい独特で詩的です。多少技巧に走りすぎと思える部分もありますが、そこが三浦氏の持ち味だから仕方ありません。物語など二の次で(現に起承転結など無視したかのような流れです)、この文章を噛み締めるのが彼女の楽しみ方な気がします。インタビューで彼女は好きな行為を(妄想)と言い切っています。確かにこの作品は教授という存在の周りに居る人間の妄想集とも言える造りになっています。兎に角彼女の文章は素晴らしいの一言。ということは私も妄想好きなのかもしれません。

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 小説はとどのつまり人間を描く。主人公の生きざまだけでなく、ひととひとが織りなす関係をみつめていく。ある出来事を切っ掛けにして、男と女、親子、家族、友との濃淡のあるつながりがいかなるものか、ストーリーをからませて繊細な感性で迫っていく。  それをハード、濃厚に陰影、悪意も見逃さずに、あるいは極み、深みへと触手を伸ばす作家もいる。山本文緒、岩井志麻子、桜庭一樹、田口ランディ、山田詠美、中山可穂、男性なら天童荒太、山田宗樹あたりか。  あっさりとやり過ごし、けして露わな形にしない稀な小説家...... [続きを読む]

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