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2007年12月26日 (水)

俺には明日はあるのか?

テンポの良い犯罪小説「ヒートアイランド」「ギャングスターレッスン」「サウダージ」とシリーズ物をヒットさせ、現地取材を事細かに行いブラジル移民の積年の恨みを痛快な復讐劇として大藪春彦賞を受賞した「ワイルドソウル」という傑作を世に送り出した垣根涼介さんの異色作「君達に明日はない」を読みました。今までの作風とガラッと代わってリストラを軸にした人間ドラマ系の物語です。この本の出版の話を聞いた時、????マークが沢山頭に浮かびました。何故垣根氏がリストラの話を?疑問と不安イッパイで読みだしたのですが、直ぐに杞憂に終わった事に気付きます。確かに従来の作品とは全く手触りは違うのですが、登場人物を深く書き込むという点で全く同じ上手さが際立っていました。主人公は一見冷酷に見えるリストラ請負人の会社の社員。仕事と割り切り要請のあった会社に出向き、一人一人面接で相手の弱い点を鋭くつき任意退職に持ち込むのが仕事です。初めの内は彼の冷酷さばかりが目に付きますが、読み進めて行くと冷酷の中にも彼なりの優しさがホンワリと浮かび上がって来ます。何て酷い奴という印象が、連作短編を読み進める内に非常に人間くさい部分に愛着を感じるようになります。垣根氏巧い!と思わず声にしてしまいます。大藪春彦賞とは毛色の違う山本周五郎賞をこの作品で受賞しています。この作品をキッカケに更に作風の幅が広がった気がします。今までも充分ファンだったんですが、更にファンになりました。今回この本を読んでいて身につまされたのは、リストラを言い渡された人達の狼狽ぶりと恨み辛み節です。まー急に言われるのですから当然といえば当然です。性格が出るのかあっさり受諾する人も居れば、絶対に認めないとごねる人との差が余りにも激しい。さて自分はどうだろうか?個人事業をしている私にはリストラなど永久に無縁と思っていたのですが、昨年からの飲酒罰金強化により世の中から(郊外の飲食店)はある意味リストラを突きつけられたと同じ状態になっています。何とか一年乗り切りましたが、来年は更に厳しい一年になる事は既に覚悟はしています。さて物語りの登場人物の様に現実をちゃんと受け止めてサッと身を引くのか、それとも死ぬ気でしがみつくのか?本を読みながら登場人物のリストラされる人達と自分を照らし合わせ、何となく現実的に深く考えさせられた読了感でした。既に続編として「借金取りの王子」も出版しているそうです。物凄く読んでみたい!

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