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2007年12月 2日 (日)

青春の後姿を人は皆忘れてしまう

荒井由美の名曲「あの日に帰りたい」の歌詞に(青春の後姿を人は皆忘れてしまう)という部分があります。小学生の頃聞いた曲なんですが、その時はなんとも思わなかったんですが、40歳になった私には色々考えさせられる歌詞です。青春というものは真っ只中に居る時と、過ぎ去ってからでは感じ方が全く違う存在で、視点や状況が変わると180度想いが変わります。昨日読んだ米澤穂信(よねざわ・ほのぶ)さんの「ボトルネック」の帯びにはそんな事を明確に表現する一文が書いてありました。「青春小説には二つの方法がある、と勝手に言い切ってしまいます。一つは(過ぎ去って初めて分かる事がある)という大人の視点で物語を進めるもの。もう一つは(渦中に居なければ感じ得ない事もある)という同じ目線で若さを描くもの」正にズバリ青春というものを小説の技法ということを媒体に言い当てた名言だと思います。そして青春小説を得意とする米沢氏は完全に青春の渦中に居る視点でこの小説を書き上げました。設定自体は昔から良くあるパラレルワールド風です。何かの拍子で別の世界に迷い込んだ主人公。その世界は自分が存在せずに、本当の世界では流産で産まれなかった姉が存在しています。自分が居ない代わりに姉が存在しているだけで、他の登場人物は本当の世界と全く同じです。しかし状況は全く違います。本当の世界では自殺した少女が明るく生きてたり、険悪な両親が滅茶苦茶仲良く生きてたりします。その事実を目の当たりにして、諸悪の根源が自分にあった事を気付かされます。大人視点で見たらそれ程痛みを感じないですが、正に渦中に居る時にこの事実を突きつけられたら本当に辛いんだろうと思います。思いますという表現をするのは、既に私が大人目線でしかこの小説を読む事が出来ない存在になってしまっているからです。多分リアルな年齢でこの小説を読んだ若者で、感性の強い人や繊細な人はかなり凹むのではないかと思います。米沢氏の本はこの本で二冊目ですが、傑作「犬はどこだ」の終わり方同様、この本の終わりも物凄く重たいです。ここまでバットエンド小説も珍しいのでは?と思います。しかも青春小説でですよ!この点が米澤氏の持ち味といえば持ち味なんでしょうが、賛否両論分かれるところだと思います。まー青春なんて字づらだけで見ると爽やかそうですが、振り返れば青春時代は案外残酷で辛い事も多い時代かもしれません。大人目線の私には少し距離感がある小説でした。

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コメント

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投稿: Olga | 2007年12月 5日 (水) 00時55分

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