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2007年8月11日 (土)

現実感は希薄

渡辺謙主演で映画化もされ、第18回山本周五郎賞も受賞した荻原浩さんの「明日の記憶」を読みました。通常これだけ有名になると中々手にとっては読まない作品ですが、100円で見つけたので読んでみました。50歳にして若年性アルツハイマーと診断された主人公と妻の物語です。まーテーマとしては良くある感動系の話です。一日一日と些細な事を忘れていく主人公の恐怖と絶望感、その夫の側で同様に苦悩しながらも共に歩いて行こうとする妻。お互いの心の葛藤を荻原氏らしい優しい文体で書き上げてあります。読んでみてこれは一般受けするだろうと直ぐに分ります。適度な泣かせ所や自分の身に重ねあわせやすい設定といい、正に映画化向きだしベストセラーになる要素満載です。しかし私にはリアル感があまり伝わって来ませんでした。何故かというと全体に上品過ぎるからです。実際にアルツハイマーの人を身内に持つ人からすれば、こんな綺麗な話ではまとまらないだろうし、もっと人間臭い苦悩が沢山あるのではと思います。勿論私も経験があるわけではありませんが、何となくこんなに簡単ではないのは分ります。小説(勿論元々ノンフィクションだから)の総てがリアル感に溢れている必要は無いと思いますが、こういった深刻なテーマを扱う場合はそれなりのリアル感は必要な気がします。私も含めてこの本をサラッと読める人は、本当のアルツハイマーの経験は勿論、直ぐ側にアルツハイマーの人が居ない人なんだと思います。良くも悪くも優等生的な良書でした。

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