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2007年8月12日 (日)

文系の書いた理系小説

昨日書いた「明日の記憶」が若年性アルツハイマーで自分の意志に反して記憶が無くなって行く絶望感を描いたのに対して、偶然連続して読んだ本も記憶が無くなる恐怖を描いた本でした。しかしこちらの記憶の無くし方は自分の意志で自分の記憶を消すという行為によっての記憶消去をベースにしています。タイトルは「レテの支流」といい、第11回ホラー大賞長編賞佳作を受賞しています。「明日の記憶」が現実でも在り得る話なのに対して、こちらの設定はまるでSFの世界のような非現実的な設定です。脳をいじる事で自分が消去したい期間の記憶だけを消せるという設定。本人も記憶を消したという実感がある為、その期間の記憶が無くても何の違和感も感じないのですが、何故かその期間以外のある記憶だけが無くなっている事に突然気付きます。高校生の時に自殺したはずの友人を街で見かけると、一気に話はパラレルワールドに嵌りこんで行きます。果たして記憶の謎は!といった感じの内容です(かなり端折りました)。物語の設定は物凄く良いと感じましたが、この手のサイエンス系の小説にありがちな理系の人しか理解が不可能な医学的な説明が難しく、読んでいて少し萎えます。風呂敷を大きく広げた割には今ひとつ纏まっていない感じの終わり方に感じました。まーデビュー作ですから当たり前ですけどね。それでも分らないなりに最後まで読ませる筆力は物凄いと思いました。こんな難しい話を書いているんだから完全理系出身だと思っていたんですが、実は法政大学文学部文学科出身だそうです。これには正直驚きました。でもこの筆力はやはり理系でなく文系ですね。この後2006年に「三年坂 火の夢」で江戸川乱歩賞を受賞しています。目茶読みたいです。デビュー作から切磋琢磨し更に上手くなった彼の作品を早く読んでみたいです。最後になりましたが作者の名は早瀬乱と言います。今後更なる活躍の期待出来る作家さんだと思われます。因みに今回の角川ホラー文庫の表紙は結構イケてました。今後もこのレベルを望みます。

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