« 何時の間にか少女は・・・ | トップページ | 信じるのではなく、感じる »

2007年7月23日 (月)

自らの最後を見据えた作品

以前のブログに既に書きましたが敬愛して作家藤原伊織さんが今年亡くなりました。デビュー作から総て読んでいた作家だけに本当に残念で仕方ありませんでした。食堂癌である事を自ら告白してから、何作書けるだろうか分らない状態で作品を出しつづけて来ました。何時かは終わるが来る事は分っていた事ですが、遂に昨年発売の「シルウスの道」が最後の作品となりました。作者が既にこの世に居ない事を分った上での読み始めだったので、何時にも増して一文・一文をじっくり読み込みました。しかし読んでいく内にグイグイ物語の世界に引き込まれゆっくり読むどころか一気読みしてしまいました。物語の舞台は大手広告代理店、主人公は酒とギャンブルに溺れるが仕事は出来る男。突然湧き上がった大きなプレゼンで社内が騒然となる中、何十年も会っていなかった親友達の名前が絡んだ事件が・・・。主人公は消せない過去を背負い進むべき未来に向かって一人奔走します。果たして事件の真相は・・。と言った感じの内容です。作者が作家デビューする前に電通勤務していた経験が顕著に表れた作品です。加えて自分の最後の遺作となる事を悟ったかのような集大成的な要素も存分に含まれています。「手のひらの闇」での広告話、「ひまわりの祝祭」での絵画、「蚊トンボ白髭の冒険」の株。今まで藤原氏が取り上げてきたテーマの総てがこの話には詰まっています。そして最大の泣かせ所はデビュー作にして直木賞受賞した「テロリストのパラソル」の中に出てきた、酒以外はホットドックしか出さないバーが再び登場する所です。別段悲しいシーンでは無いのですが、作者がどんな想い出このシーンを入れたか考えると物凄く目頭が熱くなりました。遺作だからと言うわけでなく傑作です。本当に惜しい才能をなくしました。総ての作品に登場する主人公の様に、最後まで逃げる事無く死と対決して散った藤原氏の生き様がヒシヒシ伝わる作品でした。

|

« 何時の間にか少女は・・・ | トップページ | 信じるのではなく、感じる »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 自らの最後を見据えた作品:

« 何時の間にか少女は・・・ | トップページ | 信じるのではなく、感じる »