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2007年5月 9日 (水)

好き・嫌いのハッキリ分れる作品

男性作家と女性作家を比べると女性のほうがグロテスクな話を書く事が多いと感じるのは私だけでしょうか?男性作家の描くグロテスクさは非常に視覚的で直接的なのに対し、女性作家の描くグロテスクさは精神的で観念的なドロドロした感じを受けます。そんな女性作家の中でも非常に精神的にグロテスクな話を書く稀有な作家桐野夏生(きりの・なつお)さんの「残虐記」を読みました。この本は新潟で実際に起こった19年間少女監禁事件をヒントに書かれた本だそうです。あくまでもヒントにしただけで実際の事件とは全く関係の無い内容となっています(女児が監禁されたという点だけは同じです)。何時も書きますが事件は解決してからが本当は大変という事をこの小説も描いています。犯人が捕まり開放されても、世間の厳しい視線に晒され精神的な苦痛を背負い続けなければいけない。一生続くこの苦悩の方が監禁よりキツイのかも知れません。その辺をこの作品は上手く描いています。勿論監禁自体が物凄い犯罪で、その事件によって少女の感性に一生治る事の無い歪みが出来てしまった事は間違いない事実ですが、本当の残虐はやはり事件後の生活な気がします。賛否両論分かれるだろうなーと思う点は、実際の事件をベースにした割に監禁された側の気持を軽く扱っているという点と、結果をハッキリさせていない点の二点に集約されている気がします。この結果を読者にまかせる書き方は直木賞受賞作で実際にあった神隠し的な幼児失踪事件をベースにした「柔らかい頬」と同じ手法をとっています。東電OL殺人事件をベースにした「グロテスク」は泉鏡花賞を受賞しているし、この作品でも柴田錬三郎賞を受賞しています。桐野さんは実際の事件をベースにして書いた作品は10割バッターです。この作品も女性にしか書けないドス黒い人間の業に溢れた内容でした。

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