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2007年4月 2日 (月)

長い再開

世間の話題を集めている村上春樹訳の「ロング・グッドバイ」を読み終えました。皆さん御存知のように、この作品はレイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説の古典的名作の再翻訳です。私を含めてハードボイルド好きの人達には清水俊二氏の翻訳の「長いお別れ」で既に愛着のある一冊です。この本が翻訳されたのが1958年だそうです。既に半世紀が過ぎようとしています。人々の生活も街の様子もガラッと変っている状態で、今再読するといささか表現が古めかしく感じたりします。そこで登場したのが現在考えられる最高のチャンドラーフォロアーの村上春樹氏だったわけです。本人も公言してる通りチャンドラーの文体にかなり影響を受けています。新たなる翻訳をお願いするならこの人しかいなという適役です。さて個人的にも高校生の時読んで以来の再読ですから、25年ぶりのフィリップ・マーロウに再開です。25年ぶりですから正直細部は全く憶えていませんでしたので、全く新しい本として楽しめました。お店が暇だったせいもあり、530ページ程の厚さを一気に二日で読みきりました。とりあえずの感想としてはやはり名作です。半世紀たった現在でも全く色褪せる事の無い輝きを感じました。村上氏と清水氏の決定的な違いは、村上氏が純文学としてのハードボイルド小説として翻訳し、清水氏があくまでも低俗なパルプ小説としての手触りを強調した訳というところにある気がしました。清水氏が翻訳した時点で、この小説がこれほどまでに名作として未来永劫に語り続けられる作品に成るとは想像もつかなかった気がします。村上氏の翻訳の出演者は皆上品です。街のゴロツキやヤクザでさえ、何処か気品を感じさせる言葉使いです。一方清水氏の翻訳に登場する脇役たちは、スラングや方言を使い猥雑な感じがプンプン匂います。正に実在する街の裏通りの喧騒が聞こえてくる気がします。どちらがいいかというのは個人的な判断でしか無いと思います。村上氏の翻訳はハード・カバーで1905円で紙質も最高、清水氏のハヤカワ文庫は720円で藁半紙の様な粗悪な紙質。それぞれその通りの翻訳の仕方な気がします。どちらを先に読むかで感じ方も全く違っていると思いますが、今の世代は完全に村上氏からチャンドラーに出会うんでしょうね。私にとっては薄汚れてても上品でもこの作品の魅力に変りはありませんでした。明日も少しこの本について書きますね。Kさんこんな感じでどうでしょうか?(笑)

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コメント

今週末、親父の3回忌で、豊橋に行きます。
夜、お店に寄ろうかと、久しぶりに覗き、ロング・グッドバイ
の稿を拝読。
私も、先日、UPしました。

投稿: アーチャー | 2007年4月 3日 (火) 09時58分

アーチャー様

 お久しぶりです。そうですか豊橋にみえますか!お会いできるのを楽しみにしています。ぜひお立ち寄りください。

投稿: マグ | 2007年4月 3日 (火) 10時24分

こんにちは。
お借りした「神は沈黙せず」が面白すぎて「ロング・グッドバイ」が早くも色褪せつつある加藤です。
確かに50ドルの淫売みたいにエレガントだった「長いお別れ」が、ちょっと近寄り難い高級娼婦になって帰ってきたみたいな、素直に喜んでよいのか複雑なところはありますね。
それにしても、(暗いところでさんざん愚痴をこぼしましたが)村上訳になって、この物語の甘さとマーロウの感傷癖がより強調されたような気がして、ここから入った人に「これがハードボイルドの代表作だ」と言うのに躊躇いを感じてしまいます。
そもそも村上氏の言う「非情系準古典」って何なんだろうか。
また、ゆっくりお話しましょう。ちょうど子供が空から降ってきたあたりです。(そっちかよ!)

投稿: 加藤篁 | 2007年4月 3日 (火) 12時07分

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清水俊二訳の『長いお別れ』を読んだのはそれこそ25年ほど昔のことで物語の本筋は全 [続きを読む]

受信: 2007年4月 2日 (月) 22時03分

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