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2007年1月24日 (水)

身を削って書いた渾身の作品

さて篠田節子さんの紹介最終日です。私が彼女の作品群の中で物凄く印象に残っている三部作があります。三部作とはいっても話しに何の繋がりもありません。ただ主題や世界観が似ている作品群という事から、私も含めた周りの読者が勝手にそう呼んでいます。宗教三部作と名付けられた三作品は、「聖域」(1994年)「ゴサインタンー神の座」(1996年・第10回山本周五郎賞受賞)「弥勒」(1998年)と言います。「聖域」は未完成の思想的な作品に魅せられて、失踪した作者を捜す間に起こる不思議な事件や魂の変化をミステリー仕立てにしてあります。「ゴサイタン」はネパールから嫁を貰った農家の男が体験する物語です。現代人がかかえる経済至上主義を真っ向から否定する内容です。魂の救済は一体何処にあるのか?という難しいテーマを書ききっています。そして「弥勒」へと繋がります。この作品は他の二作品より更に深いです。舞台はチベットになります。主人公は内戦の架空の国で革命軍に捕まります。そこでの想像を絶する捕虜生活が話の大半を占めます。読んでいて気分が悪くなるくらいの生活環境です。まさに人間として扱われていないんです。そんな生活をする中で無心論者だった主人公も、何時しか神に救いを求めます。しかし何の救いも訪れません。神の存在とは何なのか?というテーマに真っ向から立ち向かった作品です。読了後に物凄い疲労感が残ります。決して面白い本では無いと思います。しかし物凄い本である事は間違いありません。映画のように神の存在を認めるかのような奇跡も起こりません。しかし命からがら逃げ終え、寂れた寺院で主人公が見つけた朽ちた仏像に、物凄く救いを感じる瞬間が総てを物語っています。篠田さんはこの作品を書くにあったて相当の苦労をした気がします。正に身を削って書いたという表現がピッタリな本です。個人的にはこの三部作は物凄く読んでもらいたい作品なんですが、興味がない方には苦痛でしか無い作品かもしれません。「女たちのジハード」で1998年に直木賞を受賞していますが、作家が生涯で二度と書く事の出来ない渾身の作品という意味では、この「弥勒」に軍配があがります。何時かもう一度読み直してみたいと思いますが、今はその時期では無い気がします。

  

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