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2006年11月 5日 (日)

若さゆえ・・・・

私の大好きな作家の1人に真保祐一さんがいます。昨日「誘拐の果実」を読み終えました。誘拐というテーマは今までに一体何百冊の本で取り上げられたか分らない程のミステリーの分野ではベタネタです。故えに今から誘拐ネタを書こうと思うと奇天烈なトリックをひねり出すか、誘拐理由にテーマを絞り込むか、はたまた誘拐によって浮き彫りになった人間模様に光をあてるなど様々な工夫をしないと読者を納得させる事は難しい時代です。そしてこの作品は今挙げた総てを詰め込んだ感のある考え抜かれた作品です。第一章ではHOWダニット(身代金の引渡し方法や解決策)、第二章ではWOHダニット(様々な状況から犯人が浮かび上がってきます)、そして最後にWHYダニット(犯人の動機)が描かれいます。一つ解決するたびに新たな謎が浮かび上がるように技巧が凝らされています。非常に上手い造りになっています。しかしこれは私の好きな真保氏の作品ではありません!何か技巧にばかり凝り過ぎて人間味が薄いんです。真保氏の良さは地味だけど深みのある人間像をじっくり書き込む所にあると思います。この作品にはありません。どうしたんだろう?と考えたら解説で謎が解けました。実はこの作品は真保氏のデビュー前の作品で(勿論大幅に加筆はしてありますが)、1990年に江戸川乱歩賞の最終候補に残った「代償」という作品だそうです。デビュー前の作品と思えば納得いきます(逆に素人でこんなレベルの作品を書いていたとは凄いです)。やはり若さゆえ肩の力が入りまくり感に溢れています。その背景を理解すれば愛すべき小品として許せる作品です。

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