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2006年9月 2日 (土)

今更ながら最高傑作に出会いました。

数々ある本の賞の審査基準というのは物凄く曖昧で審査員の匙加減一つで賞を逃がしたりする事も多々あります。読者は正直なものでその審査理由のコメントや落選の意見に様々な反論が飛び交います。所詮人間がやっている事ですからのその審査員の個人的嗜好や思想に左右されるのは仕方ない事です。でも逃した魚がとてつもなく大きい事もあると思います。昨日読んだ野沢尚氏の「魔笛」は正しくそんな一冊でした。この作品は42回江戸川乱歩賞の最終候補まで行きながら、作品中に登場する宗教団体がその当時世間を騒がせていた(オオム心理教)を連想させるという点で、出版社側の自己防衛装置が働き落選となりました(解説で審査員である北方謙三氏もその当時の落選理由を述べています)。結果的に翌年「破線のマリス」で大賞を受賞するのですが、今になって落選作品を読むと明らかに落選作品の方が面白いし出来がいい。モーツアルトの「魔笛」にインスパイアーされ、幾つかの要素が混ざり合い(善と悪)(光と影)が入れ替わりながらエンターティメント性を忘れない極上娯楽小説となっています。毎回こういった作品に対して現実とはここが違うとか、細かい点を指摘する人が居ますがこのノンストップ一気読み感には細部など全く気になりません。野沢氏の作品は今まで「リミット」を最高傑作に挙げていましたが、今となっては「魔笛」に軍配があがります。娯楽小説としては完成形なのでは?と思わせるくらいの傑作だと感じました。特に後半のドキドキ感は映像では不可能では思えるくらいのスピード感があります。唯一犯人の自己完結の仕方に疑問がありますが、それこそ読み手側の想像に任せた野沢氏の宿題なのかもしれません。これだけの作品を読まされると彼の死が悔やまれて仕方ありません。本を読む楽しさを久しぶりに思い出させてくれました。兎に角色んな方に勧めたい一冊である事には間違いないです。

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