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2006年9月18日 (月)

正統派の極み

あなたは5年も前に何も言わず姿を消した恋人が突然目の前に現れたらどうしますか?無視しますか?五年前の疑問をぶつけますか?そして何も無かったかのように昔話や近況を話しますか?多分性格やタイプによって全く違う態度を取る事でしょう。そんな唐突の再会から始まる正統派のハードボイルド小説を読了しました。香納諒一(かのう りょういち)氏の「幻の女」(1998年「このミステリーが凄い」第6位)という作品です。この本は実に地味です。所謂レイモンドチャンドラーなどの正統的ハードボイルドの手法をとった小説で、それ以上でもそれ以下でもありません。実際の探偵や警察の捜査の様に地味で忍耐強い捜査をじっくり書き込んであります。その事実の積み重ねから浮かび上がる一つの真実をじっくり書き込んだ秀作です。ハッキリ言って派手な仕掛けも力強いヒーローも登場しません。既存のハードボイルドの枠組みから少しも逸脱する事無く、その枠を最大限に活かして書ききった感じがします。その成果は第52回日本推理作家協会賞受賞という形で評価されています。この年の対抗本が東野圭吾「秘密」・小野不由美「屍鬼」だった事を考えると、よくぞその二冊を押しのけての受賞と言った感じがします。娯楽・感動性では「秘密」の方が上、筆力・興味性は「屍鬼」が上、それを上回る正統派の極みが「幻の女」だったという事なんでしょう。それにしても男は情けないです。(たとえどんな理由があったとしても)逃げられた恋人の為に、お金にも名誉にもならない事に肩入れし肉体的にも精神的にもボロボロになるのですから・・・。しかしそれこそがハードボイルドの精神なんです。女性には理解できない世界だと思います。久方ぶりに正統派ハードボイルドの秀作を堪能しました。お薦めですが基本的に男性オンリーのお薦めです。

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