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2005年11月10日 (木)

見えない存在感

昨夜仕事を終えて帰ってきたら爆笑問題の深夜番組に作家「鈴木光司」氏が出ていました。そうですかれこそあの「リング」の作者です。今やハリウッド映画でもリメイクされ大人気作家です。しかし「リング」が出たときは全くと言っていいほど売れなかったのです。世間では鈴木氏はホラー専門作家と思われていますが実はそうではないのです。デビュー作は「楽園」(フアンタジーノーベル大賞)というフアンタジーだし、二作目「光射す海」も難病を軸にしたヒューマンミステリー系でした。どちらも佳作ですがあまり売れなかったです。しかし私は「楽園」を読んで氏のストーリーテラーの力を確信していました。そして満を侍して「リング」の登場となりました。一気に読み終えた私はとてつもない恐怖感と満足度に満たされました。これは大傑作だと。これだけの大傑作にもかかわらず全く売れないという状況が続きました。それが何年か後に突然の大・大・大ブレイク&映画化!誰がここまでを想像したでしょうか?流行ると言うことは怖いことです。その後「らせん」(吉川英治文学新人賞)「ループ」「ほの暗い水の底から」「生と死の幻想」「バースデー」など立て続けにホラー風作品をヒットさせましたが、やはりピークは「リング」と「ほの暗い水の底から」の二作だと思います。この二作が何故凄いかと言うと幽霊や妖怪といった視覚的に見える怖いものを出していないのに確実に何かが存在していると言う恐怖感を感じさせる点です。「リング」は映像化された時点で鈴木氏の原作の良さが半減しました。何故かと言うと貞子という存在を目に見える恐怖として出演させてしまったからです(最後にTVのブラウン管から這い出してきますからね)映像にすると言う事はそういうことなのかもしれませんが、あれでは只のお化け映画で何でもありになってしまいます。「リング」の良さは貞子という人物の過去を探る事によって確かに貞子は存在していた事が明確になって行く一方、一週間という期限付きの状況がハラハラドキドキさせる点です(この点は映画でも十分楽しめますね)。超能力があり両性具有で日本で最後の天然痘の感染者で井戸で七日間かかって死んでいった貞子と言う人物は現存しません。しかし怨念と言う形で確かに存在しているのです(生きていないからこそ怖いのです)。目には見えないが存在感が文章の隅々にあります。同じく「ほの暗い水の底からの」一話目「浮遊する水」のマンションの水にも行方不明になっ死んでいるであろう少女の存在をひしひしと感じさせます。捨てても捨てても戻ってくるキティーちゃんのバック・屋上の水タンク・お風呂の水に話しかける娘それらから少女の霊の存在は十分感じられますが目には何も見えません。これこそ鈴木ホラーの凄さです。視覚に訴えかける恐怖より五感で感じ取る恐怖のほうが凄いです。とにかくこの二作は名作です。これからこれ以上のものが書けるかどうか心配ですが久方ぶりにホラーを書いたと昨日TVで言っていました。はたして結果は・・・。

 

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